もしあなたの体温が低く、イライラや手の震え、慢性的な疲労感といった低血糖の症状があるなら、次に気になるのは「どうすれば治るのか?」ということでしょう。
一般的に、低血糖症だと診断されると、医師や栄養士から厳しい食事制限を指導されます。
「甘いものは一切禁止」「糖質を減らせ」「タンパク質をたくさん摂れ」「1日5〜6回に分けて少しずつ食べなさい」……。
確かにこれで一時的に症状は落ち着くかもしれません。ですが、一生この生活を続けるのは大変なストレスですよね。何より、これは「根本的な解決」ではないのです。
バーンズ博士やレイ・ピート博士の視点から見ると、目指すべきは「何を食べても発作が起きない、エネルギーに満ちた身体を取り戻すこと」です。
▶ 1. 「高タンパク・頻回食・糖質制限」の落とし穴
低血糖対策としてよく言われるのが、「炭水化物を減らして肉などのタンパク質をたっぷり摂る」ことや、「空腹になる前に間食を食べる(頻回食)」ことです。
しかし、この方法には大きな欠点があります。
・代謝の低下:実は、筋肉肉ばかりの高タンパク食は、身体の代謝(メタボリズム)を下げてしまうことがあります。もともと甲状腺機能が弱く代謝が低い人にとっては、逆に疲労感を強め、甲状腺の働きをさらに抑え込んでしまう恐れがあるのです。
・ストレスホルモンの増加:糖質(炭水化物)を極端に減らすと、体は血液中の糖を維持するために、「アドレナリン」や「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。自分の筋肉や組織を分解して糖を作り出す(糖新生)ため、体をどんどん削って老化させてしまうのです。
・根本解決ではない:頻回食は「下がった血糖値を無理やり上げる」対症療法であり、肝臓の機能を治しているわけではありません。
▶ 2. 意外な救世主は「質の良い糖」と「飽和脂肪酸」
では、本当の解決に向かうため、どのような食事をすれば一番良いのでしょうか?
レイ・ピート博士が推奨するアプローチは、一般的な指導とは真逆の驚くべきものです。
それは「良質な糖(フルクトースやスクロース)」と「良質な飽和脂肪酸」、そして「バランスの取れたタンパク質(ゼラチンなど)」を組み合わせることです。
「甘いものは血糖値を乱高下させるからダメ!」と思われがちですが、質の良い糖(完熟したフルーツ、オレンジジュース、ハチミツ、純粋な砂糖など)は、実は低血糖の人の「最高の友」なのです。
・肝臓にグリコーゲンを蓄える:フルクトース(果糖)はインスリンを大量に分泌させることなく、肝臓にスッと入り、グリコーゲンとして蓄えられます。これが「血糖値の安定した貯蔵庫」になります。
・ストレスホルモンを抑える:十分な糖が体にあると、体を削って糖を絞り出す必要がないため、ストレスホルモンの分泌がピタッと止まります。
そして、そこに「良質な飽和脂肪酸(バターやココナッツオイルなど)」を組み合わせるのがポイントです。
飽和脂肪酸は腹持ちを良くし、血糖値の安定をさらに助けてくれます。逆に、植物性のサラダ油や種子油(PUFA=多価不飽和脂肪酸)は、代謝を落とし甲状腺ホルモンの邪魔をするので避けるべきです。
▶ 3. 甲状腺治療がもたらす「本当の自由」
食事の工夫で症状をコントロールし、体に安心感を与えることは大切ですが、根本的なゴールは「肝臓と甲状腺の機能」を正常に戻すことです。
甲状腺ホルモンがしっかりと働きはじめると、肝臓は再びグリコーゲン(糖の貯蔵庫)をたっぷり蓄え、必要な時に安定して放出できるようになります。
治療や代謝の回復が軌道に乗れば、以下のような変化が現れます。
・1日3食で平気になる:頻繁に間食をしなくても、震えやイライラなどのエネルギー切れが起きなくなります。
・甘いものも楽しめる:かつては食べた瞬間に具合が悪くなっていたデザートや炭水化物を食べても、発作が起きなくなります。
バーンズ博士の患者には、治療後に「実験」としてレモンクリームパイを食べ、さらにチョコレートを一箱食べてみた女性がいましたが、低血糖の発作は完全に消えていました。これが「完治」の姿なのです!
▶ 4. まとめ:自由な食卓を取り戻すために
もしあなたが今、低血糖の症状やエネルギー不足に苦しんでいるなら、まずは以下のステップを検討してみてください。
- 診断:基礎体温を測り、甲状腺機能低下の可能性を確認する。
- 食事(短期的・長期的対策):糖質制限をやめ、オレンジジュースやフルーツなどの「良質な糖」と、ゼラチン(コラーゲン)などのバランスの良いタンパク質、そしてバターやココナッツオイルなどの「飽和脂肪酸」を恐れずに一緒に摂る。代謝の邪魔をするPUFA(植物油脂)は避ける。
- 根本対策:甲状腺の働き(代謝)をサポートするアプローチを行う。
食事制限に縛られる人生から、自由な食卓を取り戻す希望は、あなたの「代謝(甲状腺と肝臓)」を本来の姿に戻すことにあるのです。
次号予告:「性格」のせいではなかった
「お酒を飲むと人格が変わる」「自分でもコントロールできないほどイライラする」「子供がキレやすくて困っている」
これらも、実は低血糖症と甲状腺機能低下(エネルギー不足)が絡んでいるとしたら?
このシリーズ最終回となる次号では、メンタルヘルスやアルコール、そして子供の行動問題と低血糖症の深い関係について、希望の持てるお話をします。
