糖質制限を「頑張れる人」ほど危ない。ご飯を食べて眠くなるのは、糖のせいではなく”糖を使えない体”のサイン

ここでは、ちょっと勇気のいることを書きます。

私自身、5年以上、糖質制限をしていました。

しかも「がんばって」やっていました。
糖質を避け続けるって、結構な精神力がいるんですよ。

周りがパスタを食べていても我慢。
おにぎりを横目に、サラダチキン。
甘いものなんて、もう何年も食べていない。

……そういう人ほど、実は体の中で
とんでもないことが起きていたりします。

1. 糖を食べて眠くなるのは、糖が悪いからじゃない

糖質制限を長くやっていた方が、
久しぶりに外食でご飯やパスタを食べたとき。

ガーンと眠気が襲ってきて、
もう起きていられない。

「フードコーマ」と呼ばれるこの現象。

多くの方がこのとき、こう思います。

「やっぱり糖って、体に悪いんだ」

……でもね。

ちょっと待ってください。

それは「糖が悪い」のではなくて、
「糖をうまく利用できない体になっている」サインなんです。

糖質制限を長く続けると、体は糖の代わりに脂質でエネルギーを作ろうとします。
「ケトン体で回っている」と誇らしげに語る方もいますが、
実はこの状態、体にとっては「ストレス代謝」なのです。

つまり、省エネ・サバイバルモード。

健康になったわけではなく、
体が「仕方なく生き延びている」状態。

だからこそ、久々に糖が入ってきたとき、
体がその処理を上手にできず、血糖が乱高下してしまう。

眠くなるのは、糖のせいではなく、
「糖を使えなくなった体」の叫びです。

2. 糖質制限は「健康法」ではなく「生存戦略」

これは、ちょっと厳しい言い方かもしれません。

でも、正直にお伝えしますね。

糖質制限を頑張っているとき、
体は確かに何かが変わったように感じます。

体重が落ちたり。
頭がシャープになった気がしたり。

でもそれ、体が危機モードに入って
コルチゾール(ストレスホルモン)を出しまくって
なんとか血糖を保とうとしている状態なんです。

ストレスホルモンには一時的に「覚醒感」や「やる気」を出す効果があるので、
最初は「調子いい!」と感じます。

でも中長期で見ると、代謝はどんどん落ちていきます。

冷え、抜け毛、夜間覚醒、疲労感……

「あれ? 最初は良かったのに」

そう感じ始めたなら。
体はもう、限界を訴えています。

3. 私が糖質制限をやめて一番驚いたこと

正直に告白します。

糖を取り入れ始めて、
一番驚いた変化は、「髪の毛」でした。

赤ちゃん毛が、わらわらわらわら生えてきたんです。

もともと髪が少ないタイプではなかったので、
「抜け毛で悩んでいる」という自覚はなかったのですが。

でも糖を摂り始めたら、
もう頭中に短い毛がピンピン立ち始めて(笑)。

バカ毛とか、あほ毛とか言いますよね。
あれがもう、すごい量で。

つまり、私の頭皮細胞は
知らず知らずのうちに「エネルギー不足」で
髪の毛の生産をサボっていたんです。

自覚がないまま、体は静かに省エネしていた。

これが、糖質制限の怖さです。
目に見える症状が出る前に、
体はあちこちで「やめてるよ」と静かに手を抜いている。

あなたの体も、静かにサインを出しているかもしれません

ここでお伝えしたかったのは、

「糖質制限を頑張っている自分を責めないでほしい」

ということ。

だって、それは本当に「頑張って」やっていることだから。

でもその頑張りの方向が、
もしかしたら体を追い詰めている可能性がある。

それを知るだけで、次の一歩が変わります。

まずは、朝の一杯のオレンジジュースから。
細胞に糖を届けてあげること。

それだけで、体は「あ、もう省エネしなくていいんだ」と
少しずつ目を覚まし始めます。

薄皮を一枚ずつめくるように、
でも確実に、体は変わっていきます。


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

夜中の2時、3時に目が覚めるのは肝臓からのSOS。朝まで眠るための肝臓強化5つのコツ

これは、1泊2日で福岡に行き、はじめましての方たちと新しいAI技術を使って作業する勉強会に参加した時の話です。
1級建築士の方、税理士の方、デザイナーの方、保育士の方……と、本当に様々な業種の方との時間でした。

さて、プロメタボリックアプローチをやっていき、更に脳機能回復もやっていくと、どんどん自分のキャパが増えていくことを実感します。

プロメタボリックアプローチって、それをやって、疲れがさっと取れる身体、頭がキレキレに働く脳、イライラしない心、そういう状態になって、そして、「あなたは何をしたい???」ってところに行くのだと思っています。

逆に言うと、何をやるにも、私達は「この自分の身体」を通してしか世の中を楽しむことも、活動することも出来ないので、この身体を整えておくことがポテンシャルよく、楽しみ、活動するための最大に重要なことになるのです。

その時、お話させていただいた中で、やはり色んな方がいて、

「AIを使うための教材は買ったけど、でも、まだ読めて無いから導入出来ていないんだよねー、そもそも勉強が嫌いすぎて、、、」とおっしゃっている方もいらっしゃいました。

話を聞くと、私と同じ時期に同じ教材を購入してる。

これを使って、もっと仕事を進めよう!と言う想いは同じであっても、そして、その方向に足を踏み出している、ということは同じでも、もう漫画作ったり、ホームページ作り変えたり、いろんなシステムを動かし始めている私と、その、まだ導入さえしていない、と、その作業会のときに教科書を読んで、うわ〜文字がきつい〜(泣)となっている方との違いはなんでしょう?

私は、本当に、単純に、脳のエネルギー差なだけだって思っています。

その方は、栄養にも気を使っているし、朝からプロテインも飲んでいる。でも同時に、「夜中に目が覚めてしまう(夜間覚醒)」ともおっしゃっていました。

実は、この「夜中の目覚め」というエネルギー漏れを止めることこそが、脳をキレキレに動かすための最大の鍵なんです。

夜中にパッと目が覚めること、ありませんか?

夜中の2時、3時にパッと目が覚めてしまうこと、ありませんか?

「年齢のせいかな」「ストレスかな」と思っている方、多いと思います。

でも実はこれ、肝臓からのSOSかもしれません。

ここでちょっと、その仕組みと対策をお伝えしますね。

1. 夜中に目が覚める「本当の原因」

結論から言います。

夜中に目が覚めるのは、「血糖値が下がりすぎた」サインです。

私たちの体は、寝ている間も脳にエネルギー(ブドウ糖)を送り続けなければなりません。

脳は体の中で一番の「大食漢」で、体重の2%しかないのに、全エネルギーの約20%を消費します。

この寝ている間の脳への燃料供給を担っているのが、肝臓なんです。

肝臓は「グリコーゲン」という形で糖を貯蔵していて、寝ている間、少しずつそれを血液に放出して、脳の「電気代」を払い続けてくれています。

2. 肝臓の「貯金」が底をついたとき

ところが、この肝臓の「グリコーゲン貯金」が少ないと、夜中にエネルギーが足りなくなります。

すると体は「大変だ!脳への燃料が切れる!」と大パニック。

ここで登場するのが、アドレナリンとコルチゾールです。

この2つのストレスホルモンが緊急出動して、体の筋肉や組織を分解してまで糖を作り出そうとします。

Ray Peat博士(レイ・ピート博士)はこの状態を、こう表現しています。

「体がエネルギー不足に陥ると、自分自身の組織を燃やしてでもエネルギーを確保しようとする。それがコルチゾールの役割であり、それは本来、短期的な緊急措置であって、毎晩繰り返されるべきものではない」

つまり、夜中にパッと目が覚めるあの瞬間は、体が「サバイバルモード」に入った証拠なのです。

アドレナリンが出れば、心拍は上がり、体は覚醒し、目が冴えてしまう。

これは体の不具合でも、精神的な問題でもありません。

単純に、肝臓の「貯金」が足りなかった。

それだけなんです。

3. なぜ肝臓の貯金が減るのか

じゃあ、なぜ肝臓のグリコーゲンが十分に貯まらないのでしょうか。

大きな原因は3つです。

✔ 糖質を十分に摂っていない(糖質制限やファスティングをしている)
✔ 肝臓の機能が落ちている(脂肪肝、PUFAの蓄積、エンドトキシン負荷)
✔ 甲状腺機能が低下している(代謝全体が落ちてグリコーゲンを作る力が弱い)

特に私がカウンセリングで多く見るのが、「健康のために糖質を減らしている」方のパターンです。

糖質を減らせば減らすほど、肝臓のグリコーゲンは貯まりません。

当然、夜中の血糖値の底打ちが早くなり、コルチゾールの出番も早くなります。

Peat博士は繰り返しこう伝えていました。

「十分な糖質の摂取は、ストレスホルモンの必要性を減らし、体を安全な状態に保つための最も基本的な方法だ」

つまり、「糖質を減らして健康になろう」と頑張っているその行為が、皮肉にも、肝臓の貯金を空にして、夜中のコルチゾール爆発を引き起こしている可能性がある、ということなのです。

4. 肝臓を強化する「5つのコツ」

では具体的にどうすればいいのか。

今日から試せる肝臓強化のコツをお伝えしますね。

① 寝る前に少しの糖質+脂肪+タンパク質を摂る

Peat博士が繰り返しすすめていたのが、寝る前の「ちょい食べ」です。

ハチミツ小さじ1をなめる。
温かいミルクにハチミツを溶かして飲む。
チーズをひとかけ食べる。

これだけで、肝臓のグリコーゲンがほんの少し補充されて、夜中のコルチゾール発動を遅らせることができます。

牛乳のカゼインタンパク質はゆっくり消化されるので、長時間にわたってアミノ酸を供給してくれるのもポイントです。

② 日中の糖質を十分に摂る

夜の対策だけでは不十分です。

肝臓のグリコーゲンは日中の食事で「貯金」されます。

果物、ジュース、はちみつ、白米など、消化しやすい糖質を日中しっかり摂ること。

これが夜中のエネルギー切れを防ぐ一番の土台です。

特にオレンジジュースは、Peat博士が「肝臓に最も優しいエネルギー源の一つ」として推奨していたものです。

③ PUFAを減らす

多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、肝臓に蓄積すると肝機能を低下させます。

植物油(サラダ油、キャノーラ油、ごま油など)を減らし、バター、ココナッツオイルなどの飽和脂肪酸に置き換えていくこと。

PUFAは肝臓のグリコーゲン貯蔵能力を直接的に妨害します。

また、遊離脂肪酸として血中に出てくると、ミトコンドリアでの糖の燃焼を邪魔してしまいます。

「良い油」と言われているものが、実は肝臓の「貯金力」を奪っているケースがとても多いのです。

④ 塩を味方にする

Peat博士は、塩がアドレナリンを抑える効果があると述べていました。

寝る前に少し塩気のあるものを摂る(チーズ、味噌汁など)と、アドレナリンの暴走を抑えて、夜中の覚醒を防ぐ助けになります。

塩を減らしすぎると、体はアドレナリンを余計に出してナトリウムを保持しようとします。

適度な塩は体にとっての「安心材料」なのです。

⑤ ゼラチンで肝臓をサポートする

ゼラチン(コラーゲン)に含まれるグリシンというアミノ酸は、肝臓の解毒機能をサポートし、抗炎症作用もあります。

Peat博士はゼラチンを「最も肝臓に優しいタンパク質源」として推奨していました。

ボーンブロス(骨スープ)やゼラチンパウダーを日常に取り入れることで、肝臓の負担を減らし、グリコーゲン貯蔵のキャパシティを広げてあげることができます。

5. 夜中に目が覚めるのは「体質」ではない

最後にこれだけは伝えたいのですが。

夜中に目が覚めるのは、「体質」でも「年齢」でもありません。

それは、体からの明確なメッセージです。

「エネルギーが足りないよ」「肝臓が疲れているよ」と。

そして、そのメッセージに正しく応えてあげれば、体はちゃんと変わります。

実践講座の生徒さんでも、日中代謝が上がる食材をしっかりとってもらい、さらに寝る前のハチミツミルクを始めると「初めて朝まで一度も起きずに眠れました!」という方が本当に多いんです。

それくらい、シンプルなことで体は変わります。

「食べること」を恐れないでください。

寝る前に糖質を摂ることに罪悪感を持たないでください。

あなたの肝臓は、あなたが食べてくれた糖質を、夜通しかけて脳に届けてくれるのです。

それは体への最高の「おやすみなさい」です。

今夜、ハチミツ小さじ1から、始めてみませんか?


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

イェール大学の研究でわかった「腸内細菌がエストロゲンを再利用する」という事実と、ニンジンサラダの理由

ここでは、私がちょっと興奮してしまったニュースをあなたにシェアさせてください。

実は娘がイェール大学に通っているご縁で、大学の最新研究ニュースレターが定期的に届くのですが、ある時届いた内容が衝撃的でした。

結論から言います。

「現代人の腸内細菌は、非工業社会の人々と比べて、最大7倍もエストロゲンを再利用している」

……7倍ですよ?

これを読んだ瞬間、私の頭の中で「やっぱり! Peat博士が言っていた通りじゃないですか!」という声が鳴り響きました。

1. イェール大学が明かした「腸内細菌とエストロゲン」の衝撃

この研究は、世界24地域のデータを分析し、狩猟採集民、農村、都市住民の腸内細菌を比較した大規模な調査です。

そこで分かったのが、

「工業化社会の人々の腸内細菌は、エストロゲンを体外に排出させるのではなく、体内に再吸収させる能力が異常に高い」

ということ。

つまり、本来は体から出ていくはずのエストロゲンが、腸内細菌の手によって何度も何度も血液中に戻されている。

しかも、この差は乳児期から始まっているというのです。

人工ミルクで育った赤ちゃんは、母乳で育った赤ちゃんと比べて、エストロゲンの再利用能力が2〜3倍高い。

生まれてすぐの選択が、腸内細菌のパターンを決め、そしてホルモン環境を変えていく。

これは、とてつもなく重大な発見です。

2. エストロゲンの「再利用」とは何が起きているのか?

少し仕組みを整理しますね。

私たちの体では、役目を終えたエストロゲンは肝臓で処理されて、腸に排出されます。

本来であれば、そのまま便と一緒に体外に出ていくはずです。

ところが、腸内細菌の中に「β-グルクロニダーゼ」という酵素を出す菌がいます。
この酵素がエストロゲンを「復活」させ、再び血液中に戻してしまうのです。

工業化社会の腸内環境は、この「復活」能力が極端に高い。

食生活の変化、運動不足、衛生環境の変化、抗生物質の使用……これらが腸内細菌の構成を大きく変えてしまい、結果として「エストロゲン過多」の体を作り上げている可能性があるのです。

3. Ray Peat博士は、もうずっと前からこのことを言っていました

ここからが、プロメタボリックを学んでいるあなたに一番お伝えしたいことです。

Peat博士は何十年も前から、こう言い続けていました。

「エストロゲンは生殖に必要なホルモンだが、過剰になれば細胞を増殖させ、炎症を起こし、がんの土壌を作る」

「現代人はエストロゲン過多の状態にある」

「腸内環境が悪化すると、エストロゲンの排出がうまくいかず、体内を何度も循環する」

まさに、このイェール大学の研究が証明したことと、完全に一致しています。

Peat博士が「ニンジンサラダが大事だ」と繰り返し強調してきた理由も、ここに繋がります。

ニンジンの不溶性食物繊維は、腸内でエストロゲンを吸着して便と一緒に排出させる働きがあります。
つまり「再吸収させない」ためのお掃除役。

これは経験則ではなく、まさにこの「エストロゲン再利用メカニズム」を断ち切るための、極めて理にかなった戦略だったのです。

4. 「知らないうちにホルモンが変わっている」ことの怖さ

この研究で、研究者がこう語っています。

「現代の生活や乳児期の選択が、知らないうちに腸内細菌を通じてホルモンに影響を与えているのは非常に興味深い」

私はこの言葉を読んだとき、少しゾッとしました。

食べているもの。
育児の方法。
日々の生活習慣。

これらが「意識しないまま」に腸内細菌を変え、ホルモンのバランスを変え、そして乳がんや卵巣がんなどのリスクにまで影響している可能性がある。

でも裏を返せば、

「腸内環境を整えることで、ホルモンのバランスは自分で変えられる」

ということでもあります。

これこそが、プロメタボリックアプローチの核心です。

3歳で腸が破裂した私が、今では腸のことで全く悩まなくなったように。
腸内環境は、いつからでも変えられます。

まずは今日の食卓に、ニンジンサラダを一品。
それだけで「エストロゲンの不要な再吸収」を少しずつ防ぐことができます。

世界最高峰の大学が今になって証明したことを、Peat博士はずっと前から知っていた。

私たちは、正しい道を歩いています。


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

誰がどう思っても、私の価値は1ミリも変わらない|罪悪感が脳の燃料を食べていくとき

古いお家の横に、新しいお家を建てていた時の話です。

その日は「棟上げ」の日でした。

早朝から大工さんたちが集まって、一気に柱を立てていくぞ、という気合いを入れる儀式をして。

そのあとは、ざっと工事に取り掛かって、長い柱はクレーン車で吊り上げて。

ハウスメーカーさんが間に入っているわけではなく、夫が大工さんと直接やりとりしていたので、大工さんとの関わりが、すごく大きかったのです。

======

すぐそばで、淡々と働く

本当に、職人さんたちってすごいなと思います。

動きを見ていても、「そんな姿勢で、そんなことできるんですか!?」という作業を、次から次へと。

すごいなぁと思う人たちが、ものすごい勢いで、家を作ってくれている。

その、すぐそばで。

私は、いつもどおりの仕事をしていました。

午前中はカウンセリング。

午後はレクチャー。

その合間に、メールを返して、LINEの返信をして。

そうしたら、なんだか、

「私、これでいいのかしら」

という、罪悪感にも似た思いが沸き起こってきたのです。

そういうものが湧いてくるんだな〜というのが、自分でもすごく興味深くて。

======

決めていても、心は落ち着かない

もちろん、私は私がやらないといけないことをやっているわけです。

かといって、柱を立てるのを手伝えるわけもない(笑)

大工さんたちの休憩時間がいつなのかも、分からない。

そこを気にしていたら、自分の仕事が進まなくなってしまうので、もうそこはシャットアウトして、私は私のことにフォーカスしよう、と決めていました。

10時、お昼、3時のお茶出しも、私はしない。

それは夫の管理のこととして、任せよう、と。

でも、そうは言っても….。

すぐ横で、それが繰り広げられているというのは、心が落ち着かないものなのですね。

後ろ髪を引かれている、というか。

今やっていること以外に、脳のリソースが、どこかでずっとそこを気にしている。

だから、いつもより気持ちが疲れる。

以前、『「分からない」という状態が、いちばんエネルギーを使う』という記事を書きました。

休憩はいつなのか。

何か声をかけたほうがいいのか。

分からないことを、分からないまま、頭の片隅で回し続けている。

それだけで、脳は燃料を使っていくのだと思います。

======

罪悪感の正体

じゃあ、その罪悪感の正体は何なのか。

よく見てみると、

「お茶も出してくれないんだな、って思われているかもしれない」

「そういうことをしない人なんだ、って評価されるかもしれない」

そこと、結びついているのですね。

もちろん、大工さんたちが実際にそう思っているかなんて、分かるわけもないし、

たぶん、そんなこと何も考えずに、お仕事をされていたと思います。

勝手に、こっちが妄想しているだけ(汗)

そう思われることで、自分の評価が下がる。

価値を認めてもらえない。

わかりやすく、その思考になると言うより、なんかモヤモヤしている感覚を深堀りすると、そんな思いがあることに気が付きます。

ああ、これは、私がこれまでの人生でずっと抱えてきた思考パターンなんだよな〜と、改めて思った出来事でした。

(1日働いてくださった方たちに、何か持たせて帰らなきゃいけなかったんじゃないか、とかも、気になるわけです….)

======

「人から評価される」は、それだけで体のストレスになる

ここで、ひとつ研究を紹介させてください。

2004年に、心理学の専門誌(Psychological Bulletin)に、ストレスホルモンのコルチゾールについてのメタ分析が出ています。

人に心理的なストレスをかけて、コルチゾールがどう動くかを調べた実験室の研究、208本を集めて見直したものです。

そこで分かったのは、ただ難しい課題をやらせるだけでは、コルチゾールの上がり方はまちまちだった、ということ。

大きく上がったのは、「自分ではどうにもできない」状況か、「人から評価される」状況のときでした。

それどういうことかというと、

体にとっては、「人にどう見られるか」は、気持ちの問題で終わらない、ということなのですね。

実際に誰かが評価していなくても、

「どう思われているだろう」と頭の中で想像しているだけで、体は、評価の場に立たされているのと同じような構えをとりうる。

しかも、休憩時間も分からない、お茶出しのタイミングも分からない。自分ではどうにもならないことばかり。

あの日の私は、この2つの条件を、自分で重ねていたのだと思います。

ストレスホルモンは、体が「非常時」に燃料をかき集めるときのホルモンです。

かき集めて、使う。

その分、本当に使いたかったこと——目の前のクライアントさん、レクチャー、返信——に回せる余力は、減っていく。

======

「人がどう思うか」と「自分の価値」を分ける

問題は、

「人がどう思うか」と「自分の価値」が、くっついてしまっていること。

誰がどう思っても、自分の価値というものは、1ミリも増えないし、1ミリも減らない。

だって、そうですよね。

そこは、まったく関係のない話なのですから。

そこを分けて考えられないと、ずっと、あれこれ気になり続ける。

任せると決めたのだから、ただ、そうすればいいだけなのですね。

======

脳機能回復は、「何に燃料を取られているか」が見えてくること

以前の私だったら、こういうとき、感情や思考にどっぷりはまって、

何がそうさせているのか区別もつかないまま、ただ不機嫌になっていたと思うのです。

今は、脳機能回復に取り組んでいるので、

「あ、今、こういう思考になっているな」

「これは、あのパターンだな」

と、自分の中で起きていることを、少し離れたところから見ていられる。

脳機能回復って、別にメンタルセッションではないのだけれど、

自分の、何の状況が、どう自分のエネルギーを奪っていっているのか。

それが見えてくる、ということでもあるのですね。

燃料が足りない脳は、労力のかかることから後回しにします。

そして燃料は、足りないこともあるし、

どこかに漏れていることもある。

漏れている場所が見えたら、

自分にはまだ「ずれ」があるんだな、と気づくことも大事だし、

「誰がどう思っても、私の価値は変わらない」ということを、

もう一回、自分に植え込んでおくことも、大事だな〜と思っています。

======

あなたにも、

してあげられていないこと、手伝えていないことに、なんとなく後ろめたさを感じて、疲れてしまうこと、ありませんか?

その後ろめたさは、「誰かにどう思われるか」と、くっついていないでしょうか。

参考文献
Dickerson SS, Kemeny ME. Acute stressors and cortisol responses: a theoretical integration and synthesis of laboratory research. Psychological Bulletin. 2004;130(3):355-391.


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

緊張したまま食べると、むしろ体の負担に。「何を食べるか」より「どんな状態で食べるか」

急いでご飯を食べて、そのまま緊張する場に向かったことはありますか?

実は、それ……体にとってかなり危険な行動なんです。

以前、私自身がそれを体で証明してしまったことがあります。

その日は夜7時から、当時中1の娘の「部活保護者会」があって。
その前に急いで夕食を済ませて学校へ向かったんです。

保護者会が始まったら……お腹がしくしく。

「あ、消化不良だ」と即わかりました。

1. 緊張状態では、消化はピタッと止まる

結論から言います。

緊張しているとき、体の消化活動は完全にストップします。

理由は「自律神経」。

私たちの体は、緊張したとき(交感神経優位)に、こう判断するんです。

「今は戦うか逃げるかが最優先。胃腸に血液を送っている場合じゃない」

だから、胃腸への血流をカット。
消化活動をピタッと止めます。

どんなに体に良いものを食べても、緊張・焦り状態では栄養はほぼ吸収されません。
むしろ消化できないまま腸に流れ込むので、体への負担になってしまいます。

2. 「何を食べるか」より「どんな状態で食べるか」

急いで食べた保護者会の夜、私のお腹は正直に教えてくれました。

「体が交感神経モードのままで食べた食事は、消化できないよ」と。

私たちは普段、「何を食べるか」ばかりを気にしがちです。

でも、どんなに体に良いものを食べても、
体が「緊張・急ぎモード」のままでは、栄養は吸収されず、
かえって体の負担になってしまいます。

「何を食べるか」と同じくらい、「どんな状態で食べるか」を大切にしてほしいんです。

3. 食事の前にたった一つのこと

食事の前にまず、フゥーッと深く息を吐いてみる。

「あ、今私焦ってるな」と気づいてあげる。

それだけでリラックスモード(副交感神経)に切り替わり始めます。

自分の体からのサインには、ちゃんと意味があります。
あのしくしく痛んだお腹が教えてくれたこと……。

あなたの体も今日、きっとサインを送ってくれているはずです。


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

「寝てて良いよ」を信じた夫|向き合う力も共感も、脳の燃料から出ている

以前、Threadsで、ある夫婦の相談がずっと流れてきていたことがありました。

表示が77万回!!

コメント欄は、ほとんど女性。そして、ほとんどがご主人への厳しい言葉でした。

読んでいて、私は奥さんの気持ちが手に取るように分かりました。

たぶん、コメントした女性たちも、分かりすぎて、言わずにはいられなかったのだと思います。

この相談を、脳のエネルギーの側から少し考えてみたいのです。

======

77万回読まれた、ある夜のこと

相談を書いたのは、ご主人のほうです。

30代前半のご夫婦で、子どもは2人。フルタイムの共働き。

ある日、奥さんから「子どもたちが寝たら、一緒に話したいことがある」と言われます。

七五三のこと。

ランドセルのこと。

習い事のこと、旅行のこと。

寝かしつけは、子どもたちがママがいいと言うので、毎日奥さん。

その夜、ご主人も一緒に寝室に行くと、「あなたが先に寝ちゃうから、リビングで待ってて」と言われます。

でも、ご主人、横になりたくて、そのまま布団へ。

(このまま寝ちゃえたらラッキー、という気持ちもなくはなかった、とご本人も書いています…)

結局、いちばん先に寝てしまいました。

目が覚めると、奥さんは暗い寝室で、布団の上に座ってスマホを見ていた。

長男が寝るのに40分かかった。離れようとすると探して起きてしまった、と。

ご主人が「このあと1階行くの?」と聞くと、少し黙ってから「行くよ」。

「俺も起きるかぁ」と言うと、「私もお茶飲んだら寝るから、寝てて良いよ」。

それならと、ご主人は朝まで寝ました。

翌朝、奥様から届いていたLINEは、

「最初から2人の時間なんていらないと言ってくれたら良かった。期待した自分がすごく嫌だった」

というものでした。

家族ぐるみのお泊まりも、旅行も、もう行きたい気持ちになれない。

家を出るとき、「黙っていれば機嫌が直ると思ってるかもしれないけど、今回は違う」と言われた。

ご主人は、「先に寝たことの影響が、そんなに多岐にわたるのか」と驚いています。

そして、こう締めくくっていました。

家族ぐるみの泊まりには予定どおり参加したいので、それまでに収拾させたい、と。

======

「寝てて良いよ」は、最後の確認だった

コメント欄が燃えたのは、たぶん、この最後の一文です。
ことの重大さを理解していないご主人の意識がこの最後の言葉に現れていたから。

でも、私がいちばん引っかかったのは、そこではありませんでした。

「そんなに話したいことがあったなら、あんな風に言わずに、素直に言ってくれたら良かったのに」とご主人は書いてて、

ご主人は、「寝てて良いよ」を、そのまま信じたのです。

奥さんの側から見ると、あの「寝てて良いよ」は、最後の確認だったと思うのです。

40分かけて寝かしつけて、案の定先に寝てしまった旦那を暗い中でじっと待って。

「起きて、話そう」と、もう一度お願いする力は、もう残っていない。

もう一度お願いして、また流されたら、今度こそ立ち直れないから。

だから、相手に選ばせた。

そしてご主人は、寝るほうを選んだ。

奥さんにとっては、昨夜の一回の話ではなかったのですね。

「映画を一緒に見たい」
「子どもを預けてランチに行きたい」
「有給を合わせて出かけたい」

何度も言ってきて、一度も実現しなかったことの、最後の一回。

======

手は貸していた。でも、向き合ってはいなかった

じゃあ、このご主人は、冷たい人なのでしょうか。

相談を何度か読み返して、私はそうは思えなくなりました。

在宅を増やしてもらうよう会社に交渉した。

保育園の送りをしている。

家事も一通りやっている。

不要な飲み会は断っている。

「一緒に住んで、家族のために働くことが、妻を大事にしていることだと思っている」とも書いています。

彼なりに、ちゃんとやっている「つもり」なのです。

そして、ここがすれ違いのいちばん深いところだと思うのですが。

奥さんが話したかった、七五三、ランドセル、習い事、旅行。

これ、全部「家族のこれから」を考える仕事なのですよね。

いつ、どこで、いくらで、誰に連絡して。

家事や送り迎えという「仕事」は分担できていても、この「これからの自分たちを考える仕事」は、たぶんずっと奥さん一人が抱えていた。

奥さんがほしかったのは、映画やランチそのものより、

「一緒に向き合って考えてくれる人」が、そこにいることだったのではないかな〜と思うのです。

映画、ランチもそれを象徴するイベントなだけ。(だって、向き合いたくない人と映画もランチもしたくないのですから)

ご主人は、手は貸していた。

でも、向き合うことはやっていなかった。

======

「1つダメだと全部ダメ」に見える脳の中で起きていること

ご主人は、奥さんのことを「やや感情的で、考えが飛躍しすぎ。1つダメだと全部ダメのような」と書いています。

これは、脳の側から見ると、ちょっと違う景色になります。

小さい子が2人いて、フルタイムで働いて、毎晩40分の寝かしつけ。夜中も起こされる。

脳は、体の中でいちばんエネルギーを使う場所で、その主な燃料は糖です。

2013年に『Trends in Neurosciences』に出たレビュー(Mergenthaler et al., 2013)は、

脳の働きの土台は、糖の代謝がきちんと回っていることにあり、そこが乱れることが多くの脳の不調の背景にある、とまとめています。

寝不足が何年も続き、燃料も足りない。

すると脳は、ストレスのホルモンで無理やり自分を回すようになります。

アドレナリンやコルチゾールで、なんとか血糖を引っぱり出して、今日一日を乗り切る。

この状態の脳で、何が起きるか。

2007年に『Current Biology』に出た、カリフォルニア大学バークレー校のウォーカー博士らの研究があります(Yoo et al., 2007)。

タイトルがそのまま答えになっていて、

「眠っていない脳では、感情をつかさどる扁桃体と、それをなだめる前頭前野とのつながりが切れる」というものでした。

それどういうことかというと、

扁桃体は、「危ない!」と警報を鳴らす場所です。

前頭前野は、「いや、大丈夫。これは一回のことだよ」と、その警報に落ち着いてブレーキをかける場所。

このブレーキ役との回線が細くなると、警報だけが大きく鳴りつづける。

だから、ちょっとしたことが、大きな危険のように感じられる。

ひとつの出来事が、過去の全部とつながって見える。

これは、性格の問題ではなく、余裕のなくなった脳が、身を守ろうとしている状態なのです。

「産後クライシス」という言葉がありますよね。

出産後、数年のあいだに、夫婦の愛情が急に冷え込んでしまう現象のことです。

私は、その土台にあるもののひとつが、お母さんの脳の、長いエネルギー切れだと思っています。

======

共感は、燃料のいる仕事

そして、ここからが、いちばん考えたかったことです。

ご主人の脳も、たぶん、燃料が足りていません。

「相手の気持ちを想像する」

「言葉の裏にあるものを読む」

「相手に共感する」

「自分から話を切り出す」

これは、脳にとって、ものすごく「労力のかかること」です。

2014年に『Journal of Sleep Research』に出た、カナダのカルガリー大学の研究があります(Guadagni et al., 2014)。

健康な37人を3つのグループに分けて、

ひと晩まったく眠らなかったグループと、いつも通り家で眠ったグループ、同じ日のうちに2回テストしたグループとで、「共感する力」をくらべました。

人が感情を動かされている場面を見て、どれだけ心配の気持ちがわくか。自分の体がどれだけ反応するか。

結果、ひと晩眠らなかったグループだけ、そのどちらもはっきり下がっていました。

それどういうことかというと、

共感というのは、やさしさや性格の前に、脳に余力があるかどうかで、出たり出なかったりするもの、ということです。

脳は燃料が足りないと、労力のかかることから後回しにします。

ご主人の「そっと見守る」。

「今はそういう時期だから」。という動き方、

これ、外から見ると「何もしない」なのですが、脳の中では、たぶん「省エネ」なのです。

一番先に寝てしまったのも、本人の言葉どおり、本当に眠かったのだと思います。

「寝てて良いよ」を言葉どおりに受け取るのも、裏を読む余力がないと、そうなる。

そして、今まで奥さんが時間が経つとケロッとしていたのは、

見守っていたから直ったのではなく、奥さんが、自分の力で、ひとりで立ち直ってきただけ。

その「ひとりで立ち直る力」が、とうとう尽きた。

それが、今回の「今回は違う」なのだと思います。

======

どちらが悪い、ではなく

コメント欄の女性たちが、あれだけ言わずにはいられなかったのは、

みんな、どこかで、ひとりで立ち直ってきた経験があるからなのかな〜と思いました。

ご主人を責めたくなる気持ちも、すごく分かります。

でも、責められて変われるほどの燃料が、彼の脳に残っているかというと….。

どちらかが悪い、という話ではなくて、

二人とも、燃料が足りないまま、何年も走り続けてきた。

先に尽きたのが、より多くを抱えていた奥さんのほうだった。

そういうことなのではないでしょうか。

もしこのご主人に、ひとつだけ伝えられるとしたら。

お泊まりまでに収拾させよう、と思わないでくださいね、ということです。

それは、また奥さんに「ひとりで立ち直って」とお願いすることと、同じになってしまうから。

まずは、自分が何を分かっていなかったのかを、自分の言葉で奥さんに伝えること。

うまく言えなくてもいいのです。

ずっと、ひとりで考えさせていたこと。

ずっと、ひとりで立ち直らせていたこと。

そして、ふたりとも、脳に燃料を戻していくこと。

余裕のない脳同士では、どんなに話し合っても、すれ違いの上塗りになってしまうことが多いのです。

あなたの家では、どうでしょう。

「考える仕事」を、誰か一人が抱えていないでしょうか。

そして、その人の脳に、燃料は届いているでしょうか。

参考文献
Mergenthaler P, Lindauer U, Dienel GA, Meisel A. Sugar for the brain: the role of glucose in physiological and pathological brain function. Trends in Neurosciences. 2013;36(10):587-597.
Yoo SS, Gujar N, Hu P, Jolesz FA, Walker MP. The human emotional brain without sleep–a prefrontal amygdala disconnect. Current Biology. 2007;17(20):R877-878.
Guadagni V, Burles F, Ferrara M, Iaria G. The effects of sleep deprivation on emotional empathy. Journal of Sleep Research. 2014;23(6):657-663.


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

旅のあとも疲れない体はつくれる。フェリーで朝5時半着、そのまま動き続けられた理由は「代謝」でした

これは、3泊4日の関西への帰省旅がおわった時の話です。

そして、感じたこと!

結論から言います。

旅のあとでも疲れない身体は、作れます。

その正体は、やっぱり「代謝」です!!

茶畑の結婚式と、四十九日の帰省旅

その旅、

行きと帰りがフェリーなので、関西では1泊という結構強行な旅でした。

夫の会社のイギリス人スタッフと、元スタッフの結婚式。
そして、義父の四十九日の法事というなかなか大きなイベントのための帰省でした。

特に結婚式は、茶畑の中で挙げるというスペシャルなスタイルでした。

本当に美しかったのですが、なんせ茶畑。
山の上に順番に移動したり、準備が整うのを待ったり。

子供たちは待ち時間にちょっと限界に(特に一番下の7歳!)。
ぐずぐずになりながらも、なんとか持ちこたえてくれました。

それでも式が始まると、スピーチも感動的で、本当に美しい式でした。

そして披露宴。これが5時くらいまで。
さらにその後は2次会。

最後は私も子供も社交の限界に達して(笑)パーティー会場を後にしました。

しかも翌日はおじいちゃんの四十九日。
夜はそのまま実家に泊まりに向かう〜という、てんこ盛りの初日だったのでした。

全行程を無事終えて

その夜、大阪南港から
フェリーに乗って

門司港に着いたのは、翌朝の5時30分でした。

そこから車を走らせて、
長崎の自宅に着いたのが朝8時。

そんなこんなな3泊4日の旅の直後。

普通なら、布団に倒れ込みますよね。

ですが。
私は玄関を開けた瞬間から
「現実モード」に切り替わりました。

ただいま〜の瞬間から、午前中を一気に

まず、子供たちを学校へ送り出して。

その日に限って「お弁当の日」ということに気が付き。(汗)

しかも、間に合わなかったので
遅れて届ける分を急いで準備。

メニューは、
「ミネストローネスープ」です。

次に、3泊4日分の洗濯物。

洗濯機を3回転させて、
全部干し終えて。

時計を見ると、9時55分。

10時スタートの
「7日間チャレンジ」フォローアップZoomに
猛ダッシュで入室しました。

結婚式の疲れ、
フェリーの移動疲れ。

そういうのもあったはずだけど…

弁当作り。
洗濯3回転。
そしてZoomでのフォローアップ。

そのスケジュールを、
ただいま〜の瞬間から午前中一気に駆け抜けることができました。

そして正直に言いますと。

身体は、驚くほど軽かったのですよね。

「エネルギーが途切れない」
という感覚。

これって、以前の私であれば、絶対無理でした。
旅行中はまだ気が張っているから頑張れるけど、そのあとは2〜3日
使いものにならなかったなあって思います。

でも今は、
帰宅した瞬間から「さっくり」動ける。

この差はいったい何なのか?

この差は「代謝」

結論から言います。

「代謝」です。

代謝が上がっていると、
旅のあとの回復力と行動力が
以前とは全く別のものになります。そりゃそうですよね。。。

供給されるATP量が違うと、エネルギーが途切れにくいですよね。

一番感じたのは「体力」のことではなかった

でも、あの旅で一番感じたのは、
実は「体力」のことではなかったのです。

あの茶畑の結婚式。

山の上から見渡す緑の中で、
風を感じながら、
新郎新婦のスピーチに涙した瞬間。

5時まで続いた披露宴の中でも、感動で涙が出たタイミングが何度かありました。
そして、お食事も最後のひと皿まで美味しく味わえました。

私も知っている顔は、ちらほらはいるけれど、
私にとってはほとんどアウェイな環境。
間違いなく、緊張する環境です。

それでもおしゃべりする機会があった方と楽しく話して、
最後まで不機嫌にならず楽しめたこと。

以前の私だったら、
こうはいかなかったのです。

正直に言いますね。

数年前の私なら、
どんなに美しい結婚式でも、
途中から頭の中は
「疲れた」「早く帰りたい」
でいっぱいだったと思います。

感動的なスピーチも、
耳に入ってこない。

美味しい料理も、
味がよく分からない。

景色を見ても、
「綺麗だな」の一言で終わり。

身体が疲れていると、
心まで閉じてしまうのです。

代謝が上がるとは「人生をフルスペックで味わえる」こと

代謝が上がるというのは、
「タフになる」ことではありません。

「人生を、フルスペックで味わえるようになる」
ということだなって思います。

茶畑を渡る風の心地よさを
全身で感じられる。

大切に綴られた言葉に、
ちゃんと心が震える。

夜まで続くパーティーで、
「楽しい」と思える自分でいられる。

そして翌朝にも大きな行事を行い、
フェリーで帰ってきて、
そのまま弁当を作って洗濯を回して、
Zoomに入れてしまう。
(zoomでは盛り上がって時間延長でお話してしまいました!)

これが、
「代謝が整った身体」の
リアルな姿です。

もしあなたが今、

「旅行に行っても疲れるだけ」
「何を食べても、なんだか同じ味」
「感動する映画を観ても、泣けない」

と感じているなら。

それは年齢のせいではありません。
代謝が落ちているサインです。

そして、それは
「戻せる」のです。

何歳からでも。
正しい順番で、身体を満たしていけば。

私自身、
数年前は旅行のあと2〜3日
寝込んでいた人間です。

そこから私は変わったわけだけど、
特別なことをしたわけではありません。

身体が本来必要としているものを、
正しい順番で、届けただけです。

あなたの身体も、
本来はもっと「感じられる」力を
持っています。

それを取り戻す第一歩を、
一緒に始めてみませんか。


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

「人は本来怠けるもの」は思い込み|動けないのは性格ではなく、脳の燃料が足りないサイン

毎日が脳機能回復の学びの日々なわたしですが、

ドクターとのトレーニングコースとは別に、月に2回、Dr.Stephensを囲んで、世界中の仲間とオンラインで集まる質問会があります。

その会で聞いて、ずっと頭の中に残っている言葉があります。

「人間は本来、怠けるものだ」という思い込み

Dr.Stephensが、こんなことを言っていました。

「人間は本来、怠けるものだ」と、私たちは信じ込んでいる。

怠けないように自分を鍛えることはできるし、子どもを怠けないようにしつけることもできる。

でも根っこのところでは、人間とは怠けるものなのだ、と信じている、と。

それは、人を人として扱わない、たくさんの思い込みのひとつで、

まるで真実であるかのように信じられているけれど、それは実は全く本当ではない。

人間は、そのように作られていない。という話でした。

聞いていて、本当にそうだな〜と思いました。

あなたも、どこかで思っていませんか

放っておいたら、私はだらけてしまう。

だから、自分にムチを打たないといけない。

計画を立てて、締め切りを作って、気合いを入れて、ようやく動ける。

動けない日は、「私って、なんて怠け者なんだろう」と自分を責める。

これ、ほとんどの人が、疑ったこともないくらい当たり前の前提だと思うのです。

手帳術も、習慣化のコツも、自己管理の本も、

たいていは「放っておくと人は怠ける」という前提の上に立っています。

だから、うまくいかないと、もっと強いムチを探す。

もっと厳しい計画を立てる。

それでも続かないと、「やっぱり私はダメなんだ」に戻ってくる。

ぐにゃぐにゃの床の上で生まれたら

Dr.Stephensは、これをこんなたとえで説明していました。

お祭りやショッピングモールで見かける、空気でふくらませた、ふわふわの遊具がありますよね。

床がぐにゃぐにゃで、跳ねて遊ぶあれです。

もし、あの中で生まれて、一度も外に出たことがなかったら、どうなるか。

歩くときは、足を大きく開いて、高く上げないとバランスがとれない。

走ろうとすると、すぐに転ぶ。

スープを飲もうとすると、こぼれてしまう。

ずっとその中で暮らしていたら、きっとこう思うようになります。

「人間は、走るようには作られていない」

「人間は、スープを飲めない生き物なんだ」

すり傷やあざが絶えないのも、いつも緊張して体がこわばっているのも、

それが人間というものなのだ、と。

でも、それは人間の本当の姿ではないですよね。

床がぐにゃぐにゃだから、そう見えているだけ。

固い地面に降りたら、ちゃんと走れるのです。

「人間は本来怠けるもの」という思い込みも、これと同じだ、というお話でした。

このたとえで私がいちばん大事だと思うのは、

中にいる人には、床がぐにゃぐにゃだということが見えない、という点です。

生まれたときからそうなら、それが「ふつう」だから。

おかしいのは床なのに、自分の足のほうを責めてしまう。

脳は、燃料が足りないと「節約」に入る

では、なぜ私たちは「怠けている」ように見えてしまうのか。

ここで、いつもの脳のエネルギーの話につながります。

脳は、体の中でいちばんエネルギーを使う場所です。

2013年に『Trends in Neurosciences』に出た、ドイツのシャリテー大学のグループによるレビュー(Mergenthaler et al., 2013)は、

哺乳類の脳は、主なエネルギー源をグルコース(糖)に頼っていて、その糖の代謝をきちんと調節することが、脳が正常に働くための土台になっている、とまとめています。

そして、糖の代謝が乱れることが、多くの脳の不調の背景にある、とも。

それどういうことかというと、

脳がちゃんと働くかどうかは、気合いや性格より先に、まず「燃料が届いているかどうか」で決まっている、ということです。

そして、燃料が足りないとき、脳は真っ先に「節約」に入ります。

生きるのに必ずしも必要でないことから、止めていく。

新しいことを覚える。

人に会いに行く。

今日はもうひとつ、やってみる。

こういうことが、いちばん先に削られるのです。

だから、エネルギーが足りない状態の脳から見ると、

動けない、やる気が出ない、腰が重い、というのは、怠けではなくて、脳が自分を守っている姿なのですね。

そこに「私は怠け者だ」という責める気持ちが重なると、それ自体がまたストレスになって、さらに燃料を使ってしまう。

ぐにゃぐにゃの床の上で、転ばないように、ずっと体をこわばらせているようなものです。

ムチを強くするほど、床はさらに揺れる。

燃料があると、脳は「元の働き」に戻ろうとし続ける

Dr.Stephensは、こうも言っていました。

脳はいつも、元の働きに戻ろうとし続けている。

燃料が十分にある限り、それをやめることはない、と。

私は、これをすごく実感しています。

脳に正しいエネルギーを入れてあげていたら、

拡大し続けようとし続けるのが、正常な状態なんだな、と。

もっと吸収したい。

もっと動きたい。

もっとよくなりたい。

誰かに言われてがんばっているのではなく、内側から自然とそうなっていく。

わたしが、何歳になっても、20代30代の方たちに混ざっての勉強会に出かけていったのも、

娘が計算をくり返して、できなかったことができるようになっていくのを見ているのも、

ああ、これが人間の本来の姿なんだな〜と思うのです。

娘が、誰にも言われていないのに、玄関の靴を毎日並べるようになったことがあります。

Dr.Stephensが、関わった子どもたちは、燃料が満ちてくると、言われなくても、急かされなくても、叱られなくても、自分から部屋を片付けはじめる、と話していたのも、同じことなのだと思います。

ムチがなくても、人は動く。

固い地面に降りれば、ちゃんと走れるのです。

「いつも活動的でいなきゃ」ではない

ただ、ひとつだけ付け加えると、

「だから、いつも活動的でいなきゃ」という話ではありません。

休みたいときに休むのも、眠いときに眠るのも、体が本来の働きをしている姿です。

それを「怠け」と呼んで責めるのも、またぐにゃぐにゃの床の上の考え方なのですね。

燃料が満ちていれば、休んだあとには、ちゃんとまた動きたくなる。

それを信じていいのだと思います。

あなたが「私は怠け者だから」と思ってあきらめてきたことは、何でしょう。

それは本当に、あなたの性格でしょうか。

それとも、ぐにゃぐにゃの床の上で、燃料が足りないまま、がんばってきた結果でしょうか。

参考文献
Mergenthaler P, Lindauer U, Dienel GA, Meisel A. Sugar for the brain: the role of glucose in physiological and pathological brain function. Trends in Neurosciences. 2013;36(10):587-597.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23968694/


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

早朝に「ヤバい!」と飛び起きるのは肝臓の糖切れ。服選びがストレスになる「脳の燃費」の話

あなたは、忙しい日に限って「どうでもいいこと」に猛烈なストレスを感じた経験はありませんか?

実はある日、私は早朝に飛び起きました。

「ヤバい!!自分が何を着るか決めていない!!!」

…何の話?って、、これ、結婚式の話です。

実は、夫の会社のスタッフの結婚式が2日後に控えていて、その一週間ずっと「子どもたちに何を着せよう?」と悩んで、ブラウスを買ったりしていたのです。

そしてその朝、ハッと気づきました。

自分の服のことを、完全に忘れていた。(笑)その日が出発日なのに。

実はその日は、朝からバッタバタ。
インターン生の方と一緒に朝ごはんを食べて、お掃除をして、メッセージの返信をして、午後は学校の行事。そしてその後ダッシュで戻って、関西行きのフェリーに飛び乗りました。

その日から3泊4日の関西だったのです。義父の四十九日とその「結婚式」が目的です。

こんなバタバタが目に見えている中で、「パーティーの服を決めなきゃ」というのが私にとってどれほどストレスだったか…。

結局、このバタバタな中、服を着てはChatGPTに写真を見せて意見をもらい、アクセサリーを決めました。(AI時代ですね。笑)

さて、ここからが本題です。

この「早朝にパニックで飛び起きる」という現象と、「服を選ぶのがストレスすぎる」という感覚。

これ、性格の問題でもメンタルの問題でもありません。
完全に「生化学」で説明がつきます。

夜中の「非常ベル」の正体

あなたは、夜中や早朝に、理由もなくハッと目が覚めた経験はありませんか?

あれ、実は「肝臓のグリコーゲン(糖の貯金)」が底をついたサインです。

私たちの脳は、眠っている間もものすごい量のエネルギーを消費しています。
その燃料は「グルコース(糖)」です。

肝臓にグリコーゲンの貯金が十分にあれば、睡眠中もゆっくり糖を放出して、脳は穏やかに眠り続けられます。

ところが、この貯金が夜中に底をつくとどうなるか。

体は「緊急事態だ!」と判断して、アドレナリンとコルチゾールを一気に放出します。

アドレナリンというのは、本来ライオンに襲われたときに逃げるためのホルモンです。
心臓がバクバクして、筋肉に血液が集中して、頭がギンギンに冴えます。

…そう。あの「ヤバい!」という早朝の覚醒は、体が自分の筋肉を分解してまで糖を作り出そうとする「非常ベル」なのです。

だから、飛び起きた瞬間に「あれもやらなきゃ、これも忘れてた!」とパニック思考が走り出す。

これは不安症でもなんでもありません。
アドレナリンが脳を「戦闘モード」にしているだけです。

私自身、あの朝はまさにこれでした。
前日の夜、外食でタンパク質多めな食事で、寝る前に十分な糖を補給できていなかったのだと思います。

「おしゃれが面倒」は怠慢ではなく、脳の燃費の問題

そしてもうひとつ。

「服を決めるのがストレス」「おしゃれのための我慢が苦手」という、あの感覚。

あれ?って思いませんか?
なぜ、ある日は「どうでもいい」と投げやりになって、ある日は楽しく選べるのか。

答えは「脳の燃費」です。

私たちの脳は、一つ決断を下すたびに、グルコースを消費します。

朝から「子どもの準備」「講座生への返信」「PTAの引き継ぎ資料」「授業参観の段取り」…と決断を重ねるたびに、脳の糖はどんどん減っていきます。

以前、「雨漏り」のお話でもお伝えしましたが、エネルギーの予算が底をつくと、脳は「生存に直結しないこと」を真っ先にカットします。

「パーティーで何を着るか」は、命に関わりません。

だから、エネルギーが足りないとき、脳は本能的に「もう楽な服でいいじゃん」という結論に持っていこうとします。(自動で!)

「おしゃれのための忍耐」にストレスを感じるのは、怠慢でも、センスがないからでもありません。
脳が「その決断に回すエネルギー予算がもうないですよ」と、正直に教えてくれているだけなのです。

怖いのは「パターン化」されること

でもね、ここからが大事なところです。

この「糖が足りない → 決断できない → 自分を責める」のループ、放置すると、どんどんパターン化されていきます。(自動で!)

脳は省エネが大好きなので、一度このループに入ると、「私はおしゃれが苦手な人間だ」「私はストレスに弱い人間だ」という”自分像”を固定して、そこから抜け出せなくなっていきます。

これは数ヶ月、数年、下手をすると一生続きます。

「性格だから仕方ない」と思い込んでいるもののうち、驚くほど多くのことが、実は「慢性的なエネルギー不足が固定化させたパターン」だったりするのです。

自分のメンタルを責める前に、まず一口、蜂蜜でもフルーツでもオレンジジュースでも。
細胞にエネルギーを届けてあげてください。

すると、「自動パニックモード」だった脳が落ち着いて、物事の本当の意味を考える余裕が戻ってきます。

実践講座の受講生さんたちも、「忙しいときほど、こまめに糖を摂るようにしたら、夕方のイライラが嘘みたいに消えた」とおっしゃっています。

私もあの時、フェリーの中でオレンジジュースを飲みながら、肝臓のグリコーゲンを補充していました。

あなたも、もし明日の朝「ヤバい!」と飛び起きることがあったら…
それは肝臓からの「貯金が足りません」というお手紙だと思ってくださいね。


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

後回しにしてしまうのは怠けではない|目的がはっきりすると、隙間時間に勝手に入り込んでくる

日曜の朝は、毎週、脳機能回復のドクターのトレーニングコースがあります。

ある日曜日の話です。

もちろん、全部英語です。

その日もクラスがあって、最後のディスカッションのところで、参加している別のドクターから、突然こう振られました。

「けいこ、前に相談していたクライアントさんのアップデートは?シェアして」

ちょうどその後の経過があったので、なんとかお話ししたのですけれども。

この日曜日の朝は、毎週、とても試される時間だな〜と思っています。(それも、朝5時から3時間!)

日常会話なら、平気なのに

日常会話レベルなら、全然プレッシャーなくいけるんです。

でも、専門的なことを英語で質問しようとする。

意見を言おうとする。

ここは、やっぱりハードルがさらに一段高い。

しかも、20人ぐらいの限られた人数の中でディスカッションが進んでいて、そこで急に名前を呼ばれる。

英語圏の方にとっては、何のチャレンジでもないことだと思います。

でも、英語圏の人間ではない私にとっては、友達とおしゃべりするのとはまったく違う、ドキドキ感があるわけで。

大人なのに、保育園児の立ち位置

ここで、思い出すことがあります。

最初にアメリカに渡ったとき。

学生時代、受験期にはそれなりに英語を勉強してきた方だったと思います。

英語の論文も、読んでいたはずでした。

それなのに、全然通じない。

自分は大人なのに、言葉が通じないというだけで、本当に保育園児のような立ち位置になってしまう。

あの苦さは、味わったことがないと、なかなか分からないかもしれません。

言葉が通じない。

言葉が理解できない。

それだけで、人はすごく「弱者」になるんですよね。

そこから勉強して、しどろもどろの英語にも付き合ってくれる、お茶飲み友達のような存在ができて。

なんとか言いたいことを通じさせながら、やってきました。

そのあと2010年に、ニューヨークのホリスティック栄養学の学校に通うことになって。

「この英語力じゃ、授業についていけない」

と、そこでまた本格的に勉強に力を入れました。

ただ、あの頃は、先生に当てられて意見を求められる、なんてことはなかったんですよね。

「分からない」は、エネルギーを使う

以前、『「分からない」という状態が、いちばんエネルギーを使う』という記事を書きました。

私たちの体は、「悪い知らせ」よりも「分からない」のほうに、エネルギーを使うようにできている、という話です。

言葉が通じない場所にいるというのは、その「分からない」が、朝から晩まで続くということです。

相手の言っていることを、一語ずつ拾う。

拾えなかった部分を、推測で埋める。

返す言葉を、頭の中で組み立てる。

組み立てているあいだに、話はもう先へ進んでいる。

これをずっと続けていたら、疲れて当然なのですね。

しかも、そうやって必死に処理しているあいだ、外から見えるのは「うまく話せない人」の姿だけ。

保育園児の立ち位置、というのは、そういうことなのかもしれません。

10分の隙間は、意外とある

その日曜日の朝のために、自分で作った英語のアプリで、英語を鍛え直しています。

使うのは、隙間時間。

子どもを送っていくとき。

洗濯物を干しているとき。

ご飯を作っているとき。

誰でも、1日のうちで、まとまった時間はなかなか取れないんですよね。

1時間、2時間を確保するのは難しい。

でも、10分の隙間って、結構あるんです。

洗濯物を干しているとき、手はふさがっていても、耳は自由ですよね。

そういう時間に、ちょこちょこ、ちょこちょこ。

間をあけて、くり返す

この「ちょこちょこ」には、ちゃんと裏づけがあります。

学習の研究では、同じ量を学ぶのでも、一度にまとめて詰め込むのと、間をあけて何回かに分けるのとでは、記憶の残り方が違う、ということが昔から調べられてきました。

「分散学習」と呼ばれているものです。

2006年に『Psychological Bulletin』に出た、カリフォルニア大学サンディエゴ校のグループの研究があります(Cepeda et al., 2006)。

この分散学習について、それまでに発表された184本の論文、317の実験、839の評価を集めて、まとめて分析したものです。

そこで分かったのは、間をどれくらいあけるかと、どれくらい先まで覚えておきたいかが、いっしょになって、記憶の残り方を決めている、ということでした。

そして、長く覚えておきたいものほど、いちばん効く間隔も、長くなっていく。

それどういうことかというと、

一夜漬けのように、いっぺんに詰め込むのではなく、

時間をおいて、何度も出会い直すほうが、脳には残っていく、ということです。

前に、娘の計算の話を書きました。

8たす5が、くり返すうちに、もう13にしか見えなくなる。

脳はくり返したことをパターンにして、エネルギーの無駄づかいを減らしていく、という話でした。

英語も、同じなのだと思います。

毎日の10分で出会い直しているうちに、一語ずつ拾っていたものが、かたまりのまま入ってくるようになる。

それはそのまま、「分からない」に使っていたエネルギーが、少しずつ浮いてくる、ということでもあるのですね。

なぜ、ずっと後回しだったのか

ここで、ふと思ったのです。

日本に帰ってきて、なぜ今まで、英語をもっと上手に話せるようになろう、と積極的にならなかったのか。

日々の中で、それは後回しなことでしかなかった。

やっぱり、「絶対に必要だよね」という目的が、薄かったのかな、と。

アメリカの友人とオンラインで話す時には日常会話なので、少々通じなくてもなんとかなる訳で、そうすると、絶対必要!!というモチベーションにはならなかった。

今は、違います。

英語で質問しなければならない!!っていう、こんなに恵まれた環境の中にいる。

脳機能回復のドクターと直接やり取りを毎週させてもらえる環境って、そうそう無いと思っています。

その恩恵を、いま私と一緒に脳機能回復に取り組んでくださっている講座生の方たちに、還元していきたい。

そのためには、現場で起きていることを、あの場でしっかりシェアして、ドクターや、ほかの先生たちから意見をもらいたい。

そう思っていると、英語の勉強には、おのずと力が入るのです。

「やる気を出さなきゃ」と、自分にムチを打っているわけではありません。

目的がはっきりした途端に、何年も後回しだったことが、毎日の隙間に勝手に入り込んできた、という感じに近いのですね。

「人は本来、怠けるものなのか」という話を書いたことがあります。

結局、後回しにしてしまう、出来てしまうのは、怠けているからではなく、

それが自分にとって「なぜ必要か」が、まだ見えていないだけなのだろうな〜と思った出来事でした。

ただ、目的だけでは足りない、とも思っています。

ここからが、いちばん書きたかった、脳機能回復とのつながりです。

同じドーパミンでも、出し方は2通りある

英語を勉強する。

算数の問題を解く。

どちらも、脳にとっては「労力のかかること」です。

でも、昨日より聞き取れた、解けるようになった——そんなときには、脳でドーパミンが出ます。

「よし、できた!」という、あの感じですね。

ドーパミンは「快楽の物質」と紹介されることが多いのですが、

もうひとつ大事な顔があります。

それは、「労力をかけてでも、取りにいこう」と私たちを動かす、という顔です。

これを人で調べた研究があります。

2012年に『The Journal of Neuroscience』に出た、アメリカのヴァンダービルト大学のグループの研究です(Treadway et al., 2012)。

25人の健康な参加者に、PETという画像検査で、脳のドーパミンの反応の大きさを測りました。

別の日に、同じ人たちに、こんな課題をしてもらいます。

楽な作業で、小さなごほうびをもらうか。

大変な作業で、大きなごほうびを狙うか。

すると、線条体の左側と、前頭葉の内側の下のほう(腹内側前頭前野)でドーパミンの反応が大きかった人ほど、

大きなごほうびのために、より大きな労力をかけることを選んでいました。

それどういうことかというと、

ドーパミンの働きがしっかりしている脳ほど、「大変でも、やってみよう」を選べる、ということです。

「ドパガキ」は、エネルギーを節約しようとする脳

ところが、ドーパミンは、労力をかけなくても出すことができます。

ショート動画を、次から次へとスクロールする。

通知が来るたびに、スマホを開く。

「ドパガキ」なんて言葉がありますよね。

手軽なドーパミンがやめられない子ども、という意味だそうです。

出ているのは、同じドーパミン。

違うのは、そこに労力をかけたかどうか、です。

では、なぜ人は、労力のかからない方を選んでしまうのか。

だらしないからでも、意志が弱いからでもなく、

脳に、労力をかけるだけのエネルギーが無いから、だと私は考えています。

前に、娘の計算の話で、脳はくり返したことをパターンにして、エネルギーの無駄づかいを減らしている、と書きました。

脳は、いつも節約したがっている臓器です。

エネルギーが足りないときほど、その節約はきつくなる。

だから、一番労力のかからない方法で、ドーパミンを手に入れようとしてしまう。

それが、スクロールの止まらない指なのだと思います。

燃料があると、労力をかけられる

反対に、脳にエネルギーがあると、

労力をかけることが、できるようになる。

英語を学ぶ。

算数を学ぶ。

何年も後回しにしていたことに、手をつける。

目的があっても、燃料がなければ、やっぱり動けないのですね。

目的と、燃料。

この2つがそろったとき、人はわざわざ気合いを入れなくても、動きだすのだと思っています。

脳機能回復って、ただ「疲れが取れる」「よく眠れる」だけの話ではなくて、

労力をかけられる脳を、取り戻していくことでもあるのです。

言われなくても、片付けはじめる

これ、インスタのストーリーに思わずシェアしたのですが、ドクターのレクチャーの中で、

「……典型的な例が、これまで関わった全ての子どもたちです。私は「お手伝いしなさい」「部屋を片付けなさい」とは全く、あるいはほとんどいいません。
それでも、脳に燃料が満ちてくると、言われなくても、急かされなくても、叱られなくても、自分から部屋を片付けはじめる。それだけが、目安ではありませんが、怠惰は人間の性質ではないと言う一つの目安です。…..」

というお話がありました。

これ、たしかにな〜〜って深く納得するのです。

下から2番目の娘は小さな頃からアトピーで、肘の内側、膝の内側がいつもかなり痒くてアトピーの子だな、って感じになっていました。

プロメタボリックで改善もしてきたけど、それでも、ちょっと外食があると、とか、埃っぽいところに行くと、とか、何かのきっかけで爆発する感じが続いていたのです。

皮膚症状に対しても脳機能回復が有効だと知って以降、娘に伝えて、そしたら、娘は自分でちゃんと摂取するようになっていました。

それは、彼女曰くは、「ちゃんと取り組んでいると、夜すぐに寝られる、パパやママが寝付いたあとにも私だけ寝られない夜が一番嫌だったけど、それが全くなくなったから!」と言う理由でした。

寝付きの改善がすぐに起こったのですが、皮膚の方はすぐには変化していなかったです。でも、ココに来て、秋口という一番皮膚が荒れやすい時期にも関わらず、彼女の皮膚はどんどん良くなって行ってて、「あれ?この頃薬を塗っているの?だからきれいになっているの?」と聞いたら、「いや、薬は全然塗っていないんだよ〜なんか、きれいになってきた!!」というのです。

彼女も脳機能回復7〜8ヶ月は取り組んできて、結果が出てきたようです。

そして、そこから、さっきのドクターの話とどう結びつくかと言うと、

主人が2週間出張で留守だったのですが、その間、玄関の靴並べをその娘がちゃんとやるんです!!!
私、一言もやれって言っていない。そもそも、それは主人がやってくれていた役割で、わたしはやらない仕事なのですが(汗)

毎日、ちゃんと並んでいるんです。

それとか、お姉ちゃんとか妹に、部屋を片付けることを伝えていたり、なんか、頭の中がオーガナイズされている感じが凄い!!!と見ています。

たしかに、自分も5年片付けていなかった棚を片付けたり、いろいろな業務を効率化するための仕組み作りしたり、と、

頭の中のゴチャゴチャがより整頓されているこのごろなのですが、自分以上に娘にその様子があると、

「うわーこれが脳機能回復の効果なのね!!」と改めて感動しています。

「もっとこうだったらいいのに」を、自分で作る

AIを否定している方もいらっしゃいますけれども、私は、本当に本当に助かっています。

やりたいことを、人に頼まなくても、どんどん形にしていけるからです。

世の中には、英語の教材がいろいろありますよね。

でも、使っていると「もっとこうだったらいいのに」が出てくる。

何か商品を買っても、ユーザーとして、もうちょっとこう、と思うことって、ありますよね。

それを、自分がいいと思う形に、自分で作り出せる。

子ども向けの英語教材も作っていますし、娘の算数のアプリもそうです。

娘が算数がどんどん得意になっていったように、私自身も、英語の時間がうまく取れるようになってきて、いい感じだなと思っています。

ほかにも、講座生の方たちに使ってもらっている、プロメタボリック的なことが毎日リマインドされる記録の手帳。

それから、体に筋力をつけていく、ボディメイクのアプリも試作中です。

そんな状態の、日曜日の朝でした。

あなたにも、ずっと「いつかやろう」と思ったまま、後回しになっていることはありますか。

それは、あなたにとって、「何のために」必要なことでしょうか。

そして、そこに手を伸ばせるだけの燃料は、今、脳に届いているでしょうか。

参考文献
Cepeda NJ, Pashler H, Vul E, Wixted JT, Rohrer D. Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin. 2006;132(3):354-380.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16719566/
Treadway MT, Buckholtz JW, Cowan RL, Woodward ND, Li R, Ansari MS, Baldwin RM, Schwartzman AN, Kessler RM, Zald DH. Dopaminergic mechanisms of individual differences in human effort-based decision-making. The Journal of Neuroscience. 2012;32(18):6170-6176.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22553023/


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。

▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/