全5回のシリーズでお伝えしてきた通り、低血糖症は単にお腹が空く病気ではありません。
それは、脳の唯一のエネルギー源である「ブドウ糖」が遮断される危機的な状態です。
最終回となる今回は、低血糖症が私たちの「心」や「行動」にどのような影響を与えるのか、そしてそこから回復する道についてお話しします。
もしあなたが、理由のない不安、アルコールへの渇望、あるいは「キレやすい」性格に悩んでいるなら、その原因はあなたの人間性にあるのではありません。
▶ 1. アルコールは「諸刃の剣」
仕事の後の晩酌がやめられない、あるいは少量のお酒でひどく具合が悪くなることはありませんか?
バーンズ博士は、低血糖症(およびその背景にある甲状腺機能低下)とアルコールには深い関係があると指摘しています。
- なぜ飲みたくなるのか: 甲状腺機能が弱っている人は、常に疲れ果て、エネルギー不足を感じています。アルコールには一時的な麻酔作用があり、辛い現実や疲労感を忘れさせてくれるため、つい手が伸びてしまうのです。
- なぜ危険なのか: しかし、アルコールは肝臓にとって最悪の敵です。アルコールが体内に入ると、肝臓はタンパク質から新しいブドウ糖を作る作業(糖新生)を完全にストップさせてしまいます。
つまり、お酒を飲むと一時的に気分は良くなりますが、その裏で肝臓のブドウ糖供給が止まり、より深刻な低血糖(エネルギー切れ)を引き起こしてしまうのです。アルコールの分解に大量にエネルギー使ってしまうし、ダブルパンチ。
だから、飲酒した真夜中に目が冷めやすくなる理由だし、これが、翌日の激しい不調や、飲酒時の意識消失の原因ともなります。
ここに、レイ・ピート博士の視点も重ねてみましょう。
ピート博士は、アルコールによる肝臓への酸化ストレスやダメージを防ぐためには、「飽和脂肪酸」や「十分な糖(ショ糖)」が驚くべき保護効果をもたらすと指摘しています。
つまり、お酒を飲む時こそ、良質な糖と飽和脂肪がお守りになるのです!
▶ 2. 「ジキルとハイド」のような人格変貌
「普段は温厚なのに、急に人が変わったように攻撃的になる」 これも低血糖症の典型的な症状の一つです。
バーンズ博士の実験では、インスリン注射で人為的に低血糖状態にされた学生が、わずか30分後には理性を失い、暴力的になり、自分を助けようとする医師の手を振り払うほどになりました。
しかし、ブドウ糖を補給した瞬間、彼は「数秒のうちに正気に戻り、元の協力的で愉快な青年に戻った」のです。
理由もなく不安でたまらない、幻聴が聞こえる、あるいは「誰かに命令されたような気がして」衝動的な行動をとってしまう。
これらは精神病と誤診されがちですが、実際には脳がガス欠を起こし、一時的に正常な判断ができなくなっている可能性があります。
それは「心の病」ではなく、「燃料不足」なのです。
さらなる保護として、レイ・ピート博士が強く推奨しているのが「ゼラチン(コラーゲン)」です。
ゼラチンに含まれる「グリシン」というアミノ酸は、脳や神経において「抑制性(リラックスさせる)」の神経伝達物質として働き、神経の過度な興奮を鎮めてくれます。
▶ 3. 「扱いにくい子供」の正体
「うちの子は落ち着きがない」「すぐに癇癪(かんしゃく)を起こす」 子育てに悩む親御さんにも、バーンズ博士は希望のメッセージを送っています。
いわゆる「問題児」とされる子供たちの多くは、実は甲状腺機能が低下しており、常に慢性的な疲労状態にあります。
疲れすぎた子供は、かえって神経が過敏になり、注意力が散漫になります。
博士はこう述べています。
「甲状腺治療は、一匹狼のような反抗的な子供を、協力的で家族の一員らしい子供へと変える。(中略)彼らが疲れていること、そしてその疲労が神経を苛立たせていることに気づいてあげてほしい」
子供を叱る前に、まずは朝の体温を測ってみてください。
もし体温が低ければ、必要なのは躾(しつけ)ではなく、治療かもしれません。
▶ 4. シリーズのまとめ:希望への道筋
5回にわたって、バーンズ博士の著書『Hope For Hypoglycemia』の世界を中心にご紹介してきました。ここで改めて、回復へのステップを整理しましょう。
- 原因を知る: 低血糖症の正体は、インスリンの出しすぎではなく、「肝臓」がブドウ糖を作れないことにあります。
- 根本を探る: 肝臓が怠けている最大の原因は、「甲状腺機能低下」です。
- 診断する: 高価な検査よりも、「起床時の基礎体温(36.6℃以下かどうか)」が最も信頼できる指標です。
- 食事で守る: 治療までの間は、糖の量は調整しながら「動物性脂肪(飽和脂肪酸)」や、神経を鎮める「ゼラチン」をしっかり摂ることで、血糖値の乱高下とストレス反応を防げます。
- 治療する:バーンズ博士が言っていることとして、 甲状腺ホルモンによる適切な治療を行えば、食事制限なしで、甘いものを食べてもお酒を飲んでも平気な身体を取り戻せます。
最後に
「あなたは健康です、気のせいです」と病院で言われ続け、孤独を感じていたかもしれません。
しかし、あなたの震えも、不安も、疲労も、すべて生理学的な裏付けがある「身体の声」です。
バーンズ博士が残したこの「希望(Hope)」が、あなたの生活を取り戻す第一歩となることを願っています。
まずは明日の朝、体温計を脇に挟むことから始めてみませんか?
ということで、長くなりましたが、バーンズ博士の低血糖症シリーズにご縁いただきありがとうございました!
何かの参考になったら嬉しいです!
