以前、こんな発信を見かけたことがあります。
「糖が足りないと、内臓や肌のコラーゲンが分解される。そんなのは誇張で、ありえない話です!!」というもの。
私たちの研究会の名前も出ていて、Peat博士の理論は間違っている、という流れのお話でした。
糖質制限をがんばってきた方ほど、こういう話を聞くと、
やっぱり糖は控えたほうがいいのかな、、、と揺れてしまいますよね。
なのでここで、きちんと整理しておきたいと思います。
「そのとおり」と思ったところ
まず、その発信の中で、私も「そのとおり」と思ったところがあります。
ひとつは、「糖新生は、健康な人でも毎日起きている」、ということ。
寝ているあいだも、食事と食事のあいだも、体は糖を作り足しています。
糖新生そのものは、悪者ではありません。
もうひとつは、その材料。
糖新生の材料は、主に筋肉のアミノ酸です、というお話でした。
これも、そのとおりなのです。
でも、ちょっと立ち止まってみてください。
筋肉のアミノ酸を材料にする、ということは、
筋肉を分解している、ということですよね。
分解のスイッチを押しているのは、コルチゾール
では、その分解のスイッチを押しているのは誰か。
ストレスホルモンの、コルチゾールです。
1984年に、アメリカの臨床研究の専門誌に出た研究があります。
健康な人に、コルチゾールを少しだけ点滴して、
病気のレベルではなく、ふだんの体でも起こりうる範囲まで上げました。
すると、たった8時間で、全身のタンパク質の分解が増えて、
糖新生の材料になるアミノ酸も増えたのです。
1988年の別の研究では、ストレスや大きなけがのときくらいの上がり方を、64時間続けました。
たんぱく質はしっかり食べていたのに、
全身のタンパク質の分解は、ずっと高いままでした。
そして、糖が足りないと、このコルチゾールは上がります。
5日間、水だけで過ごした男性たちでは、1日に作られるコルチゾールの量が、1.8倍になっていました。
「内臓」についての研究
「内臓」についても、日本の研究があります。
1998年、大阪市立大学のグループが、ラットで調べたものです。
インスリンで低血糖にすると、ストレスホルモンが上がって、
胸腺という、免疫の働きを担う臓器の細胞が、壊れていきました。
それが起きたのは、絶食させていたラットだけ。
ふだんどおり食べていたラットでは、起きませんでした。
そして、ブドウ糖を与えると、防げたのです。
栄養が足りないと、胸腺や脾臓といったリンパの臓器が縮むことも、別の研究で知られています。
肌は「合成が落ちる」のか「分解される」のか
肌はどうでしょう。
その発信では、「コルチゾールが多すぎると、肌のコラーゲンの合成が落ちて、肌が薄くなる。分解されるわけではない」というお話でした。
例に挙がっていたのは、ステロイドの薬と、クッシング症候群(体が自分のコルチゾールを出しすぎてしまう病気)。
ステロイドの薬は、体が出すコルチゾールの働きをまねて作られた薬です。
なので、薬であっても、体が自分で出すコルチゾールであっても、肌に起きることは同じ方向なのです。
そして皮膚については、たしかに一般の医学では「合成が落ちる」と説明されています。
でも、、、、
作る量が落ちて、壊れる量がそのままなら、
差し引きで、肌は薄くなっていきます。
合成が落ちるのか、分解が増えるのか。
どちらにしても、体が自分の組織を目減りさせている、という点では同じなのですね。
実際、コルチゾールが多すぎて筋肉がやせる仕組みは、「分解が増えること」と「合成が落ちること」の両方だと、医学の側も説明しています。
1回お腹がすいたくらいで、内臓は壊れない
ひとつだけ、大事なことを添えておきます。
1回、少しお腹がすいたくらいで、内臓が壊れるわけではありません。
短い低血糖では、体はうまく持ちこたえる、という研究もあります。
Peat博士が言っていたのは、
糖が足りない状態が、毎日、何か月も続くこと。
コルチゾールが高い状態が、ずっと抜けないこと。
そのとき体は、生きのびるために、筋肉や肌、ほかの組織から少しずつ材料を引き出して、糖を作り続ける。
組織が「犠牲になる」というのは、そういう意味なのです。
これは、特別な理論ではなくて、医学の研究でも確かめられてきた、コルチゾールの働きそのものなんですよね。
どんな状態の方に、どんな糖を、どんな入れ方で
もうひとつ、その発信では「はちみつや砂糖をたくさん摂りましょう、というのはおかしい」というお話もありました。
これは、私も同じ考えです。
わたしの講座の中でも、「はちみつをバンバン食べるのは、肝臓に負担がかかっている方には危ないですよ」とお伝えしています。
一口に糖といっても、
どんな状態の方に、
どんな糖を、
どんな入れ方で。
ここが、いちばん大事なところなのです。
そもそも、糖をまだ上手に使えない体に、受け入れられない量を入れることはできません。
だから講座では、その方の体の状態を見ながら、量と入れ方を少しずつ合わせていきます。
同じ「糖をとる」でも、中身は同じではない
それから、その発信では、私たちの研究会と、ほかの講座やほかの先生の考え方が、ひとまとめに語られていました。
でも、こちらでお伝えしていることは他とは全く別のものです。
お伝えしている内容は、この数年でも、受講生の皆さんの経過を見ながら、さらに深くすすんで、ずいぶん積み重ねて変わってきています。
同じ「糖をとる」という言葉でも、中身は同じではない。当プロメタボリック栄養医学研究会はプロメタボリックのトップである、Ray Peat博士、そして、その後を引き継ぎ研究を重ねる方々、そして脳機能回復の第一人者であるDr.Stephensの教えを誠実に伝え、実践者が真に健康に導かれることを目的としています。
そこは、お伝えしておきたいなと思いました。
糖を摂ることは、「もう削らなくていいよ」と伝えること
そこを研究し、私は、糖を怖がらなくていい、とお伝えしています。
糖が入っていれば、体はわざわざ自分を削って、糖を作らなくてすむ。
コルチゾールに必要以上に頼らなくてよくなる。
糖を摂ることは、甘やかしではなくて、
体に「もう削らなくていいよ」と伝えてあげることなのだと思っています。
いろいろな情報があって、何を信じたらいいか分からなくなるときこそ、
自分の体が、糖を入れたときにどう変わるか。
そこを、いちばんの手がかりにしてみてくださいね。
参考文献(論文の名前で検索できます)
Simmons ほか 1984年 J Clin Invest(PMID 6365973)
Darmaun ほか 1988年 Am J Physiol(PMID 3048115)
Bergendahl ほか 1996年 J Clin Endocrinol Metab(PMID 8636290)
Morishita ほか 1998年 Diabetes Res Clin Pract(PMID 9699084)
Schakman ほか 2013年 Int J Biochem Cell Biol(PMID 23806868)
Tanaka ほか 2011年 J Neurosci(PMID 21653842)
Battezzati ほか 2009年 Nutr Metab Cardiovasc Dis(PMID 18693094)
この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
脳と代謝のお話を、メールでお届けしています。
▶ ニュースレターの無料登録はこちら
https://rondo-form.mentalbeauty.workers.dev/

