花火の夜、娘の姿が見えなくなって。心配はこんなに「燃料」を使うという話

ある夏の夜、住んでいる町で夏祭りの花火大会がありました。

子どもたちは数ヶ月も前からこの日を楽しみにしていて、
屋台でいろいろ買えるようにって、
家のお手伝いを頑張ってお小遣いを貯めていたほどでした。

今日は、その夏祭りの夜に起きた、
ひやっとした話を聞いてください。

1件のLINE電話

当日の子どもたちは、それぞれ別行動でした。

小2の娘は、お友達と待ち合わせて、明るいうちから。
お友達のお父さんも、一緒にいてくれることになっていました。

中1と小4の娘は、姉妹2人で回ることになっていて。

私と夫は、夜の花火のときに合流する予定でした。

夕方、おしゃれして出ていった子どもたち。
連絡もしてこないし、
「すごい楽しく回ってるんだね〜」なんて言っていたのです。

いよいよ花火の時間が近づいてきたので、
私と夫も会場のほうへ歩き出しました。

そのとき、1件のLINE電話。

顔見知りの保護者さんからでした。

「小4の娘さんが1人でいたので、保護して、今一緒にいます」

——えっ。

聞けば、お姉ちゃんとはぐれてしまって、
どうしよう、とひとりでうろうろしているところを
見つけてもらったそうなのです。

花火は上がり始めたのに

駆けつけて、小4の娘は、まず確保。

じゃあ、小2の娘は?

一緒にいてくれているはずのお父さんと連絡を取って、
その場所に行ってみると——

「あれ? どこ行ったかな」

いない。

そばにいたお友達が言うには、
「別の男の子と一緒に行ったよ」と。

そんなことをしているうちにも、
花火は、上がり始めてしまいました。

花火は、とってもきれいなんです。

でも、小2の娘が今どこにいるのか、分からないまま。

私は全然、花火に集中できませんでした。

その男の子のお母さんに、どうやったら連絡が取れるだろう。

携帯の中を必死で探って、探って、
やっと連絡先を見つけて、つながって。

「一緒にいますよ〜」

その一言で、やっと、息ができた気がしました。

花火が終わったらここで待ち合わせましょう、と約束して、
無事に娘を受け取って、一件落着です。

あの1時間、体の中で起きていたこと

家に帰ってから、どっと疲れが出ました。

そして思ったのです。

あの1時間ほど、私の体の中では
何が起きていたんだろうって。

「子どもがいない」

そう思った瞬間から、体は緊急モードに入ります。

アドレナリンが出て、心臓がドキドキして、
肝臓は蓄えていた糖を血液に放り出します。

探すため、駆け出すための燃料を、
体が総動員するのです。

だからあのとき、私の血糖値は
上がっていたはずなのです。

でも、です。

花火をきれいだなあと味わう余裕も、
おなかが空いたと感じる余裕も、
私にはありませんでした。

燃料の使い道が「娘を探す」の一択になって、
それ以外に回す分が、なかったのですね。

緊急モードが毎日続いたら

「いましたよ」の一言で、ふっとゆるむ。

そのあとに来た、あのどっとした疲れ。

ああ、心配って、こんなに燃料を食うんだな〜と、
しみじみ思いました。

緊急モードで燃やしまくった分の、請求書ですね。

一晩だけなら、いいのです。
ごはんを食べて、眠れば、戻ります。

でも、もし。

「見つからない子を探している夜」のような緊張の中に、
毎日いる人がいたとしたら、どうでしょうか。

仕事のプレッシャー。
家族の心配ごと。
先の見えない不安。

体はずっと緊急モードのまま、
糖を血液に放り出し続けます。

なのに、その糖が本当に必要としている場所には届かず、
脳はガス欠のまま。

健診では「血糖値が高い」と言われるのに、
体はいつもだるい。

——あの夜の私が、ずっと続いているような状態です。

娘たちは翌朝、何ごともなかったかのように
お祭りの戦利品を並べて遊んでいました。

子どもの切り替えの早さには、かないません。笑


この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
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