今日は、少し生化学的で、でもとても大切なお話をさせてください。
実は以前、糖代謝やCO2(二酸化炭素)、そして「ボーア効果」(血液中の酸素を細胞に引き渡すための体内の仕組み)について「安静時の生理状態では成り立たない」「理論に飛躍がある」といった栄養学的な批判記事を見かけました。
その中で、私の「日本プロメタボリック栄養医学研究会」も、やり玉に挙げられていたんです(笑)。
こういう批判を目にすると、驚いたり「えっ、私がやっていることは間違っているの?」と不安になったりする生徒さんやクライアントさんもいるかもしれません。
ですので今日は、当研究会としての生化学的な見解と、私たちが部分的なデータではなく「生命の全体性」をなぜ見ているのか、その真意をお話ししますね。
1. 糖を食べれば勝手にCO2が増えるわけではない(完全燃焼の前提)
批判している方は、「糖質を食べても一過性のCO2産生は大して増えない」と主張しています。
これね、実はその通りなんです。
えっ?と思われるかもしれませんが、糖質(グルコース)を食べたからといって、誰もが自動的にミトコンドリアでそれを完全燃焼できるわけではありません。
もし甲状腺機能が落ちていたり、慢性ストレスがあったり、PUFA(サラダ油や魚油などに含まれる、とても酸化しやすい多価不飽和脂肪酸)の害がある状態だと、糖代謝の鍵を握るゲートキーパー(糖がミトコンドリアというエネルギー工場に入るための「関所」のような存在)である「PDH(ピルビン酸脱水素酵素)」という酵素がブロックされてしまいます。
すると、糖を入れてもミトコンドリアに入れず、手前の解糖系で乳酸に変わるだけ(酸素があるのに糖を完全に燃やせず乳酸にしてしまう「ワールブルグ効果」)になってしまいます。乳酸になるプロセスでは、CO2は作られません。
だから、私たちがお伝えしているのは単に「糖をたくさん食べよう」という表面的な話ではありません。
「ミトコンドリアが健全に糖を燃やせる体質(PDHの活性化や甲状腺機能の回復)をどう取り戻すか」。
そこをアプローチするのが、プロメタボリックアプローチの本当の価値なんです。
2. CO2こそが「血流」の支配者
また、「日常の酸素供給で重要なのはCO2ではなく、血流やヘモグロビン、鉄である」という批判もありました。
しかし、ここでとても重要な生理学的事実が抜け落ちています。
それは、「血流そのものを直接コントロールしている主要因子がCO2である」という点です。
CO2は強力な「血管拡張剤」です。特に脳血管や微小な毛細血管において、CO2の濃度が下がると、血管はキュッと収縮してしまいます。
ストレスや低代謝によって呼吸が浅く速くなると(過呼吸状態)、体内のCO2が逃げてしまい、血管が閉じます。
いくら血液中にヘモグロビンや酸素(SpO2)が十分あっても、肝心の血管が閉じていれば、細胞に酸素は届きません(これを機能的虚血と言います)。
さらに、低CO2状態(アルカローシス)では、ヘモグロビンは酸素をがっちりと掴んで離さなくなります。
(※血液の中にどれだけ酸素があっても、CO2が足りないと、酸素を細胞にバトンタッチできなくなってしまうのです。この「CO2の力によって、ヘモグロビンが酸素を細胞にリリース(荷下ろし)する仕組み」のことを、生化学では「ボーア効果」と呼びます)
CO2は単なる老廃物ではなく、血管を広げて血流を確保し、酸素を細胞に引き渡すための「生命のマスターキー(制御分子)」なのです。
3. 私たちが「鉄サプリ」を慎重に扱う理由
さらに、「糖ばかりを神格化して、ミトコンドリアに必要な鉄を軽視している」という批判。
これも大きな誤解です。私たちは鉄を軽視していません。むしろ、「鉄の持つ強力な毒性」を誰よりも警戒しているからこそ、慎重にお伝えしているんです。
鉄は確かにエネルギー産生に不可欠です。でも、体内のエネルギー(ATP)が足りていない低代謝の状態で鉄サプリなどを大量に補給すると、鉄を安全な形でエスコートして運んだり、格納したりするタンパク質(セルロプラスミンやフェリチンなど)を体が作れません。(※セルロプラスミンは、銅を抱えて鉄を安全に輸送する大切な受け皿タンパク質です)
その結果、体の中で「フリー(遊離状態)の鉄」が増えてしまいます。
このフリーの鉄が、体内に蓄積したPUFA(多価不飽和脂肪酸)と結びつくと、体内で「サビ(酸化)」を爆発的に増やす化学反応(フェントン反応)を起こして強烈な活性酸素を発生させ、ミトコンドリアの膜をボロボロにしてしまうのです。
だからこそ私たちは、「まず糖代謝を回して十分なエネルギー(ATP)を作り、鉄を安全にコントロールできる体になってから鉄を扱おう」という、安全な『順序』を大切にしています。
常識や部分的なデータに振り回されないために
生化学の教科書の一部を切り取ったような「局所的なデータ(安静時の一過性の数値など)」だけを見ると、生命の全体が見えなくなります。
でも、私たちの体はすべてが繋がり、フィードバックし合っている「動的な生命の場」です。
① 糖を燃やせる体になり(PDHの活性化)
② 豊かなCO2が自律的に作られ
③ 血管が広がって酸素が細胞へ届き
④ さらにATPが生まれて細胞の構造が守られ、鉄などの金属も安全に扱える。
この最高の「正のスパイラル」を全身で回していくこと。
それが、当会が提唱している本物のプロメタボリックアプローチです。
私は、姉が自己免疫の症状から回復して元気になった姿を見て、そして多くの受講生やカウンセラーたちが変わっていくのを見て、確信しています。
部分的な数値で「飛躍だ」「間違いだ」と議論することよりも、体全体のエネルギー循環を取り戻し、笑顔で生きられる土台を作ることの方が、はるかに重要です。
大切なのは、目の前にある「生命の事実」です。
あなたは10年後、20年後、どんなエネルギーに満ちた体でいたいですか?
これからも、常識の枠を超えた「本当の体と心の仕組み」をしっかりとお伝えしていきますね。
この記事は、石井恵子のニュースレターでお届けした内容をもとにしています。
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